新米技術者の研究メモ

思いついた工学的なお題についてゆるーく考察・解説していくブログ。

LTspiceで位相余裕を測定する

この記事は筆者が別ブログで掲載していたものをこちらに引っ越し、改訂したものです。(元ブログの記事は削除済み)

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今回は、LTspiceで位相余裕を確認します。

 

位相余裕はフィードバック系のシステム安定度を示すパラメータで、電子回路では、出力が発振するかどうかの判断に使い、しばしばFRA(周波数応答解析)と呼ばれます。

 

位相余裕が如何なるものなのかは教科書にお譲りするとして、本稿では、適当(デタラメ)に設計した降圧コンバーターを例に、位相余裕を確認してみたいと思います。

    

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図1 LTspice上の降圧コンバーター回路
  
図1は以前に設計した降圧コンバーター回路です。専用ICを使わずに、汎用部品だけで降圧回路を再現してみました。それだけでもとても勉強になりました。
 
 

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図2 フィードバック部分
 
図2はフィードバック部分をアップにしたものです。フィードバック部分にAC電源を挿入してあります。振幅はリップル電圧に埋もれないように200mVと大きめにしてみました。周波数は変数を指定し、後で範囲を決定します。
 
 

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図3 周波数応答解析のためのコマンド

図3は位相余裕やゲイン余裕を測定するためのコマンドで、おまじないです。LTspiceのサンプル回路にありますので、コピーすると良いです。
 
.step~は変数freqの範囲を決めています。ここでは10k~100kにしています。
.param t0=2mというのは、2msec後からデータを保存するという意味です。多分。スイッチングレギュレータは安定するまでに時間がかかるので、過渡解析を実行して、安定したところでAC解析をするのだと考えています。
 
.measureコマンドは単に変数定義し、計算させているだけです。最後のコマンドは、公式のサンプルから少し変更しています。
 
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後は実行ボタンを押すだけ。終わるまでに結構かかります。ステップ数を多くすれば、それだけ細かな解析ができますが、私の貧弱なノートPCでは一生終わらなくなる可能性もあるので、この辺にしておきました。
  

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図4 SPICE Error Log 画面
 
解析結果の見方が少々変わっています。メニューバーのView⇒SPICE Error Logを開いて、図4の画面が出たら、右クリックからPlot .step'ed .meas dataをクリックします。
ウィンドウが出ると思いますが、はいでOK。
 
 

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図5 グラフ画面(何も表示されていない状態)

 
図5の様に、何もグラフが表示されていないウィンドウが出たら、右クリック⇒Add Traceをクリックします。
 
 

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図6 Add Trace画面
 
図6の画面では、gainを選択してOKを押します。
 
 

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図7 解析結果
 
図7がAC解析の解析結果になります。位相余裕はゲインが0dBの時に、位相が-180 degからどれくらい余裕があるかです。
 
今回は0dBの時の位相が-117.7 degなので、位相余裕は62.3 degになりました。目安として60 degくらいは一般的な適切値なのだそうで、まぁOK?でしょうか。この目安も文献によってマチマチな印象なので、個人的によく分かってないんですよね。そこは出力を実際に見ながら検討というところでしょうか。ちょっとその辺は勉強が足りておりません。 
 
長くなりましたが、今回はLTspiceで位相余裕の検証に挑戦してみました。公式のサンプルがあったのでだいぶと助かりました。
 
けど実際、測定器でFRAを測定するのは一苦労なので、こうやってPC上で簡単に調べられるというのはとても画期的です。今後ためになりそうです。
 
今回はここまで。

  

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